CRGホールディングス株式会社は2023年10月2日、同社の完全子会社である株式会社パレット(本社:東京都新宿区)が、フロンティアリンク株式会社(本社:東京都中央区)から就労移行支援事業を取得すると発表しました。今回の取得により、パレットがすでに展開しているサテライト型障害者雇用サポートオフィスや就労移行支援事業所、自立訓練(生活訓練)事業所との相乗効果を見込み、より幅広い地域・領域で精神障害者や発達障害者を含む多様な就労希望者を支援していく狙いがあります。取得価額は8,100万円で、取得予定日は2024年10月1日とされています。

フロンティアリンクから取得する8カ所の就労移行支援事業所は、札幌市、仙台市、東京都江東区、新潟市、名古屋市、岡山市、広島市、福岡市と、全国の主要都市に位置しています。これらの事業所は駅近など交通アクセスのよい立地にあり、利用者が通いやすい環境が整っているため、学習や面接練習などの支援サービスを受けやすいメリットがあります。さらに、それぞれの事業所は企業への就職実績が安定していることから、今後の支援プログラム拡充にも期待が寄せられています。

パレットは精神障害者・発達障害者のサポートに特化したサテライト型障害者雇用サポートオフィスや就労移行支援事業所、自立訓練(生活訓練)事業所を運営している企業です。サテライト型障害者雇用サポートオフィスは、一般企業への雇用を目指す障害者に対し、働く場所を用意するとともに、必要な訓練やサポートを提供することで、雇用のミスマッチを低減する試みが特徴です。利用者の多くは直接企業で働くことが難しい状況にあるものの、オフィスでの実習や専任スタッフによるフォローを受けることで、業務に慣れたりスキルを身につけたりしながら、少しずつ社会との接点を増やしていくことができます。

また、就労移行支援事業所では働きたいと考える障害のある方に対して、パソコンスキルの習得やコミュニケーション能力の向上、ビジネスマナーの学習などを行っています。これらの事業所では、利用者一人ひとりの特性や希望に合わせた支援プログラムを提供しており、職場実習などを通じて実践的なスキルを身につけることが可能です。自立訓練(生活訓練)事業所においては、就労だけでなく生活面での自立をサポートし、地域社会へスムーズに適応できるよう支援を行っています。

一方で、今回フロンティアリンクから取得する事業所は、地域の特性も多種多様です。たとえば、首都圏の事業所が存在する東京都江東区はビジネス街と住宅街の両面を持ち、障害のある方が職場を選びやすい環境にあります。札幌市や仙台市、新潟市、名古屋市、岡山市、広島市、福岡市といった地方都市においても、各地で活発な経済活動が行われており、多くの企業が人材を必要としています。それぞれの地域において就労移行支援事業所が果たす役割は、単に就職機会を提供するだけでなく、地域の企業と障害者の橋渡しを行うことでもあります。

フロンティアリンクの就労移行支援事業は、売上高2億6,100万円、経常利益2,400万円と公表されています。規模としてはコンパクトに見えるかもしれませんが、福祉・障害者支援というビジネス領域においては安定的な収益を上げている点が評価されています。今回パレットが同事業を取得することで、既存の事業所とのネットワークを強化し、より広い地域・より多様な利用者に向けてサービス提供が可能になります。さらに、CRGホールディングス傘下の経営基盤を活用することで、施設の充実やスタッフの研修・育成などに力を入れ、支援の質を向上させることが期待されています。

CRGホールディングスは、派遣・請負業などの人材ビジネスを中心に展開する企業グループです。多方向から働く人々をサポートする事業を行う中で、障害のある方の就労支援にも取り組んできました。今後は、多様な働き方や雇用形態が注目される時代背景を踏まえ、障害者雇用をより積極的に推進することで、人材確保と企業の社会的責任(CSR)を両立する狙いがあります。特に障害者雇用は法定雇用率が定められていることもあり、企業にとっては責務の一つであると同時に、個々の才能を生かした組織づくりの可能性を切り開く重要な取り組みでもあります。

今回の事業取得で注目したいのは、サテライト型障害者雇用サポートオフィスが担う役割です。サテライトオフィスの特徴は、就労場所と支援機能が一体となっていることです。通常の就労移行支援では、利用者は支援事業所に通いながら就職活動を行い、実習や面接を経て直接企業と雇用契約を結ぶという流れになりがちです。しかしサテライト型の場合、実際にパレットなどが用意する拠点で働きながら、スタッフによるサポートを常に受けられるため、働く上での困りごとに即座に対応できるのが利点です。これにより、職場定着率の向上や雇用のミスマッチ防止など、利用者のみならず受け入れ企業側にも大きなメリットがあるとされています。

さらに、十分なサポートを受けながら業務に慣れ、能力を発揮できるまでに至れば、その後は企業の本社や別の職場に移って働くことが可能となります。その過程で、企業は利用者の得意分野や苦手分野を把握しやすく、適材適所に配置しやすくなるのです。こうした仕組みは、特に精神障害や発達障害を持つ方が働くにあたり不安を抱えやすい場面で大きな効果を発揮すると言われています。例えば、業務の進め方や職場のコミュニケーションパターンが把握しきれずにストレスを抱えてしまい、結果的に就労を断念するケースがありますが、サテライトオフィスで段階的なトレーニングを受けることによって、そのリスクを軽減できます。

一方、今回取得する就労移行支援事業所では、利用者の就労に必要な知識・スキルを身につけるためのカリキュラムが充実しているとされています。パソコンの操作やビジネスメールの書き方、ビジネスマナー、さらにはウェブデザインやプログラミングなど、近年需要が高まっているIT関連のスキル習得支援を行う事業所も存在しています。また、一般的な就労支援だけでなく、地域の企業とのマッチングや、就職後のアフターフォローまで一貫して取り組む姿勢が評価されています。

CRGホールディングスが本格的に障害者雇用の分野を強化する意図としては、社会的意義の高い事業への参入という観点だけではなく、企業側のニーズにも応えたいという思いがあると推察されます。日本国内では少子高齢化に伴い労働人口が減少傾向であり、今後ますます多様な人材が必要とされます。障害者雇用の促進は、単に法定雇用率を満たすためのものではなく、多様性を尊重し、多様な人材を生かす企業文化を築くうえでも大きな意味を持ちます。業務プロセスや組織マネジメントを見直しながら、障害を持つ方が活躍できる職場環境を整備していくことは、長期的に見れば企業の競争力強化にもつながるのです。

今回の事業取得によって、CRGホールディングスの子会社パレットが運営する拠点数やエリアが広がることで、利用者にとっては通いやすさや選択肢の増加が期待できます。地方在住の方や遠方の地域でも、自身のライフスタイルや希望に合った事業所を選択できるようになるでしょう。さらに、パレットの強みである特化型支援プログラムと、フロンティアリンクの就労実績や施設ノウハウが融合することで、より高度で効果的なサービスの提供が可能になると考えられます。

具体的には、メンタルケアやカウンセリング体制の強化、個別支援計画の作成精度向上など、利用者一人ひとりに合った支援の実現に向けた取り組みが想定されます。就労移行支援事業においては、就職前の訓練・トレーニングだけでなく、就職後の定着支援も重要な役割を果たします。企業内での上司や同僚とのコミュニケーション、体調管理、仕事のスケジュール調整など、慣れない環境で不安を感じる場面は多々あります。適切なタイミングで外部の支援員がフォローし、必要があれば職場と連携して対応することで、利用者は安心して働き続けられます。

障害の有無にかかわらず、個々の能力や意欲を最大限に発揮し、それを企業側もうまく受け入れる土壌が整えば、持続的な雇用関係が生まれやすくなります。CRGホールディングスはこうしたシステムづくりを促進するべく、今回の事業取得を通じて全国の主要都市での就労支援ネットワークを拡大し、障害者雇用のモデルケースを確立していくことを目指しているとみられます。

今後は取得予定日である2024年10月1日に向けて、具体的な運営体制や事業所スタッフの移管作業などが進められる見通しです。利用者へのサービス提供に支障が出ないよう、十分な引き継ぎ期間が確保されることが重要です。支援プログラムや利用者データの機密管理、スタッフの労務に関する諸問題など実務的な課題も少なくありませんが、CRGホールディングスとフロンティアリンクの協力体制によってスムーズに移行が行われることが期待されます。

今回の案件は、障害者雇用や就労支援ビジネスの今後の注目度を示す事例でもあります。少子高齢化やダイバーシティへの意識向上などを背景として、障害者が活躍できる場を作ることは、一企業だけの問題ではなく社会全体の課題としても認識が高まってきています。就労移行支援や自立訓練事業は、利用者の生活と仕事の質を向上させるだけでなく、地域社会や経済全体にとってもメリットがある取り組みといえましょう。

今後、CRGホールディングスとパレットは、新たに取得する8カ所の就労移行支援事業所を活用することで、より多くの障害者が自分に合った働き方を見つけ、安定的に就労できる環境づくりを進めると考えられます。それはまた、企業側にとっても多様な人材との出会いの機会が広がり、労働力不足の解消や新たな発想の獲得につながる可能性を秘めています。

今回の買収が成功裡に完了し、パレットの強みとフロンティアリンクの事業が有機的に結びつくことで、障害者就労支援分野におけるモデルとなるような取り組みが一層進展することが期待されます。企業の社会的責任が叫ばれる現代において、サステナブルな社会を実現するためには、すべての人が能力を生かして働ける場を拡充することが欠かせません。今回の事業取得が、その大きな一歩になることを願います。