エルアイイーエイチ(以下、「LEIH」といいます)は2023年10月24日、障害者就労支援施設を運営するMAGパートナーズ(千葉県松戸市。売上高8,420万円、営業利益△2,580万円、純資産△2,340万円)を株式交換によって子会社化することを決定しました。同社は障害者就労支援事業を強化するとともに、新たな事業領域の拡大を図るねらいです。
今回の株式交換により、MAGパートナーズはLEIHの完全子会社となります。当初、株式交換予定日は2024年10月15日とされていましたが、2024年10月2日に発表した追記事項によって、株式交換予定日が10月17日に変更されました。この記事では、LEIHとMAGパートナーズに関する概要や、株式交換の詳細と狙い、その後の追加発表に至る経緯などを、さらに深堀りして解説いたします。
■ LEIHとMAGパートナーズの概要
LEIHは、幅広い事業領域を手がける企業として知られています。同社は、既存事業の拡大や新規事業の開拓を積極的に進めており、特に近年は社会課題を解決するビジネスへの取り組みにも注力しています。障害者福祉や高齢者介護、保育事業など、社会インフラを支える分野に対するニーズは年々増加しており、LEIHはこうした分野での事業拡大を重要な経営戦略のひとつと位置づけてきました。
一方、MAGパートナーズは2017年に設立され、障害者の就労支援を中心に事業を展開する企業です。同社のグループでは、就労継続支援A型および就労移行支援の事業所を3施設(千葉県2施設、神奈川県1施設)運営しているほか、自立訓練(生活訓練)事業所を1施設(千葉県)運営しています。これらの施設では、障害がある方々が働きやすい環境を整え、就労の機会提供や生活スキルの向上を図るための支援・訓練を実施しています。
MAGパートナーズの2022年度の実績では、売上高が約8,420万円、営業利益は△2,580万円、そして純資産も△2,340万円となっており、数字上は赤字を計上しています。その背景には、障害者就労支援事業における人材確保の難しさや、施設運営にかかる初期投資・運営コストなどが影響していると考えられます。ただし、こうした支援事業は国や自治体からの補助金・助成金制度が整っているケースも多く、長期的視点で見れば事業基盤の安定化が期待できます。
■ 株式交換の狙いと意義
LEIHがMAGパートナーズを株式交換で子会社化する最大の狙いは、障害者就労支援事業の強化と、新たな事業領域の拡大です。障害者の雇用促進や、就労機会を増やすことは大きな社会課題のひとつであり、行政や企業にも強く求められています。LEIHが持つ既存の事業基盤やノウハウを活用しながら、MAGパートナーズの就労支援に関する専門性や運営ノウハウを取り込むことで、両社のシナジー(相乗効果)が期待されます。
具体的には、LEIHのネットワークを通じて新たな企業連携や雇用先の開拓を進めることで、MAGパートナーズが運営する就労支援施設で働く障害者の就労先をより広く確保していく可能性があります。さらに、LEIHが持つ資本力やマネジメント体制を活かして、MAGパートナーズの施設数や事業範囲を拡大することも視野に入れていると思われます。これにより、より多くの障害者が就労機会を得られ、社会参加を促進できる体制が整うでしょう。
■ 株式交換の詳細
本件の株式交換比率は、LEIH1:MAGパートナーズ8万1,000となっています。具体的には、MAGパートナーズの株式1株に対してLEIHの8万1,000株を割り当てるかたちです。この比率は、MAGパートナーズの評価額とLEIHの株価を総合的に勘案して算出されたものとみられます。
MAGパートナーズの発行済株式数は不明ですが、報道によると割り当てられるLEIHの総株式数は1,296万株にのぼります。同日のLEIH株の終値(29円)で試算した場合、約3億7,600万円相当となる計算です。MAGパートナーズの売上高や利益からすれば決して小さくない規模の取引ですが、LEIHは将来的な成長性や社会的意義を見込んでいるものと考えられます。
■ 株式交換予定日の変更
もともと本株式交換は、2024年10月15日を予定していました。しかし、10月2日にLEIHより発表された追記事項によって、実施予定日が10月17日に変更されました。具体的な日程の変更理由や背景については詳細が明らかにされていませんが、関係官庁の許認可手続きや契約上の調整等に時間を要する見通しとなった可能性があります。
企業間の株式交換やM&Aなどは、法的手続きの完了や株主総会での承認、監督官庁への届出など、さまざまなステップを踏む必要があります。日程の変更は決して珍しいことではなく、むしろ慎重な手続きを経ることでトラブルを回避し、スムーズな事業統合を実現しようという姿勢の表れともいえます。とりわけ、障害者就労支援施設は行政からの助成金や許認可に関わる部分も多いため、こうした手続きの確認・調整が必要になるのでしょう。
■ 今後の展望
本件の株式交換によって、LEIHは障害者就労支援分野における事業基盤とノウハウを獲得し、社会課題の解決に貢献するという積極的な企業姿勢をさらに強化できます。日本においては、高齢化だけでなく、多様な人々が活躍できる社会の構築が一段と重要視されるようになっています。障害者雇用率を高める制度改革やインクルーシブ教育の普及など、障害のある人々を取り巻く環境整備は進んできたものの、企業側には依然として障害者雇用に関する課題が残ります。
こうした課題を背景に、就労支援事業の需要は今後ますます高まると予測されます。LEIHとMAGパートナーズがタッグを組むことで、より多くの障害を持つ方々が安定して働ける環境を整えるとともに、事業のスケールアップによる経営効率の向上やサービス拡充も期待されます。また、MAGパートナーズにとっても、LEIHの豊富な経営リソースを活用できることから、経営体質の改善や新規顧客の獲得、施設の拡充などにつながるでしょう。
さらに、株式交換が完了した後は、両社間の人材交流や研修等が行われる可能性があります。就労支援や障害者福祉の領域だけでなく、LEIHが展開するほかの事業とも協業することで、新たなサービスモデルやビジネスチャンスが生まれるかもしれません。たとえば、在宅介護や地域コミュニティ支援と連携しながら、障害者向けの就労支援をよりきめ細やかに行うことができるようになる可能性があります。
■ まとめ
LEIHは2023年10月24日、MAGパートナーズを株式交換によって子会社化することを決定し、障害者就労支援事業の強化と新たな事業領域への展開を目指す方針を打ち出しました。当初予定されていた株式交換予定日は2024年10月15日でしたが、最新の発表により、10月17日に変更されました。障害者就労支援分野は社会的意義が高く、長期的な需要増も見込まれることから、本提携は双方にとってメリットの大きい取り組みとなる可能性があります。
MAGパートナーズは赤字を計上しているものの、施設運営や障害者支援ノウハウに強みを持っており、そこにLEIHの資本力と経営ノウハウ、ネットワークを融合させることで、新たなビジネスモデルの確立やサービス拡充が期待されます。日程の変更こそありましたが、本件は必要な手続きを経て、より万全な体制での事業統合を目指すための変更であると考えられます。
今後、LEIHグループのもとでMAGパートナーズがどのように事業成長を遂げるか、障害者就労支援の分野にどのようなイノベーションをもたらすのか、引き続き注目が集まりそうです。両社がタッグを組むことで、障害者だけでなく社会全体にとってもメリットが生まれる形となれば、企業価値の向上と社会的意義の追求が両立する好例となるでしょう。株式交換が完了する2024年10月17日以降の動向にも大いに期待したいところです。